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概要

西田哲学会 趣意書

時代を超えて読み継がれてきた西田哲学は、近年になって日本国内のみならず、諸外国においても、その研究者や文献の数が飛躍的に増加しつつあります。これら内外の新しい研究動向において、西田哲学は、現代の哲学思想という文脈のもと、新しい可能性を蔵する宝庫としての姿を現わしつつあります。そして宗教学や倫理学はもとより、精神医学や美学・芸術学、建築学、といった異領域からも大きな関心が寄せられ、多方面に影響を及ぼしつつあります。西田哲学研究はこれらの奥行きと拡がりとを得て、今後ますます豊饒な成果をあげていくことが予想されます。
先に燈影舎より刊行された『西田哲学選集』は、世に広く受け入れられましたが、それに続き、このたび岩波書店から『西田幾多郎全集』の新装版が刊行されつつあります。西田哲学の新たな研究機運は、これらによってさらに醸成されていくことでありましょう。
さらに特記すべきことは、西田幾多郎という「人」とその「思想」への関心が、狭い意味での学術研究のレベルのみならず、一般教養層においても、否、こういった広い知識人層おいてまさに、かつてない広がりを見せていることです。平成十四年六月に西田幾多郎の生まれ故郷・石川県宇ノ気町にオープンした「石川県西田幾多郎記念哲学館」は、こういった関心をもつ人々の出会いの場となり、平成十五年二月現在、すでに入場者が三万六千人を超えました。
奇しくも昨年九月、一九八五年に宇ノ気町と姉妹都市交流の協定を結んだドイツ連邦共和国メスキルヒ市に、「ハイデッガー記念史料館」が設立され、開館記念式典が開催されました。二十世紀を代表する東西の世界的哲学者が、二十一世紀に向けて新しい可能性を開いていくことを予感させる象徴的な出来事と言えましょう。
このような状況のもと、私どもは西田哲学についての研究や交流を推進する総合的な組織の必要を痛感し、ここに「西田哲学会」の設立に踏み切りました。
私どもは、本会が協議の哲学研究者のための学会に留まらず、西田哲学に関心を有するすべての人々に開かれた国内外の交流の場所となり、時代の要請に応じた新しい思索を探りゆく基盤となることを願うものです。

西田哲学会理事会


創立年

創立:平成15年2月1日役員組織(第4期、2012年度から2014年度。五十音順。敬称略。)

会長
松丸壽雄

理事
秋富克哉、浅見洋、板橋勇仁、井上克人、上田閑照、エルバーフェルト,ロルフ、大熊玄、
大橋良介、岡田勝明、氣多雅子、小坂国継、小林信之、竹村牧男、田中久文、田中裕、
ダリシエ,ミシェル、デービス,ブレット、ハイジック,ジェイムズ、フォンガロ,エンリコ、
藤田正勝、松丸壽雄、水野友晴、美濃部仁、森哲郎、米山優、林永強

編集委員
小林信之(委員長)、板橋勇仁、水野友晴

幹事
秋富克哉、石井砂母亜、板橋勇仁、大熊玄、熊谷征一郎、白井雅人、杉本耕一、
中嶋優太、松本直樹、水野友晴、美濃部仁

監事
上原麻有子、嘉指信雄

*なお、西田哲学会の役員については、規約第7条以下をご参照下さい。


会員組織

西田哲学会の最大の特色は、西田に対する関心の広がりに応じて、会員を狭い意味での専門研究者に 限らず、広く一般の方に門戸を開いていることです。実際、例年の年次大会には、専門・非専門を問わず、大勢の会員が参加しています。ただし、年次大会では、初日の午前中に、一般の方向けのコーナー(哲学サロン、講読部門)を設けています。
会員の区別については、規約の第4条を参照していただきたいと思いますが、A、B、Cの区別は、専門・非専門とは関係ありませんので、ご注意下さい。


会長あいさつ

西田哲学会会長をお引き受けするにあたって  松丸壽雄

大橋良介氏が、ケルン大学でのモルフォーマタ・プロジェクトのフェローに引き続き、来年夏学期も同大学哲学科客員教授として、ドイツでの滞在が長期化することにより会長職を続けることができなくなり、辞意を表明しました。皆様もご承知の如く、これが先の総会でも承認されました。これに伴いまして、平成二十二年十一月七日に京都工芸繊維大学にて理事会が開かれ、出席した理事の互選により、私が選ばれましたので、大橋前会長の残任期間の会長職をお引き受けすることにいたしました。大変に責任のある仕事をお引き受けすることになったと、今更ながらに感じております。
この哲学会は、日本における多くの学会とは異なり、研究者のみならず、研究者以外のいわゆる一般の人たちも、西田哲学に関わる事柄に興味と探求心を持つ人であるならば、学会員となることができる点に、際立った特徴を持っています。これは、西田哲学が影響を与えてきた裾野の広さを物語ると同時に、多くの人々が西田の哲学に魅せられ、その真意を究明したく思っているということです。この期待に対して、研究者は解り易い仕方で、手引きを与えなければならないと思います。西田哲学会年次大会は、これを具体化する機会となるように、私としては心を砕くつもりでおります。
ところで、この裾野は大きく世界に広がろうとしています。例えば、来年は西田哲学の実質上の出発点となった『善の研究』の出版百周年目の節目にあたりますが、これを記念して、国内では、本年十二月十八日、十九日の両日、『善の研究』刊行百周年記念国際シンポジウムが京都大学で開かれます。海外では、来年九月初旬にドイツのヒルデスハイム大学にて、西田哲学国際会議が開かれる計画があります。確実に海外の研究者が増えつつある証拠だと思います。この国内外の動向に対しても、西田哲学会が何らかの仕方で、関わっていけるように、私としては互いに交流を活発にできる基盤作りに努めたいと思っています。
『善の研究』刊行百周年を機に、日本独自の特別の企画を立てて、これに相応しい活動を展開していくのも西田哲学会の重要な課題だと思います。それと同時に、来年の七月中旬の年次大会も宇ノ気の地にて、活発な議論を呼び起こすものとしなければなりません。
今述べてきましたような様々な大仕事を、私ひとりでは到底できるものではありません。理事会、幹事会そして、石川県西田幾多郎記念哲学館のご助力、そして何よりも会員の皆様のご協力無くしては成就しません。皆様、なにとぞご支援くださいますようにお願い申し上げます。